肝機能障害のお話
血液検査や腹部超音波検査で、「肝臓の酵素が高い」、「肝臓に脂肪が蓄積している」、「肝臓に白く見える影がある」などという指摘を受けられたことのある方は少なくないかと思われます。これらの肝臓にまつわる異常所見について、ごく一部ですが、遭遇する頻度の高い話題に関し、一般的なご案内を致します。
まずは、血液検査により判明した肝機能障害がどのような結果へ辿り着いたのか?について、2001年にイギリスノッティンガムより紹介された報告をご紹介致します。
330,000人の対象人口の中で、6か月の間に8208人に肝機能検査が実施されたデータを収集し、AST( Alanine transferase)、ガンマGTP、ALP(Alkaline phosphatase)のいずれかの酵素が正常上限の二倍以上という異常であった人は、933人でした。その中には、正常上限の3倍以上の人が497人(53.3%)、4倍以上の人が142人(15.2%)含まれていました。この933人の中ですでに肝臓の病気などで原因が特定されている人を除いた342人のうち157人に精密検査が実施されました。精密検査が実施されなかった人は、数値が正常化したり、他の病気などで更なる精密検査の対象として適当でないと判断されたものです。精密検査を実施された157人のうち、60人は特に特定の肝臓病でないことが確認されましたが、97人は二次医療機関での治療や再検査による経過観察などの対応が必要でした。明らかになった肝臓病の内訳は以下の通りです。
23例 アルコール性肝硬変(Cirrhotic Alcoholic liver disease)
19例 アルコール性肝障害
15例 脂肪肝
11例 線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(Fibrotic Non-Steatohepatitis)
6例 C型肝炎
5例 原発性胆汁性肝硬変
4例 ヘモクロマトーシス
2例 B型肝炎
その他自己免疫性疾患、胆石、遺伝性肝臓疾患など
アルコール性肝障害に続き、脂肪肝関連、ウイルス性肝疾患などにより構成されていました。肝炎が肝機能障害の原因であることが多い日本と異なり、アルコールによる肝臓障害が高率でした。これは現在のイギリスでも変わりない状況です。逆に、この精密検査の過程で933人中6%強の方は病的な検査異常ではなかったということも大切な結果です。
このように、何らかの要因で肝機能検査を受け、精密検査が必要となっても、病気が判明する人、そうでない人がいるという事実から、最も肝心なのは、一回の検査に留まらず、担当医と再検査の必要性を十分に検討した上で、検査の内容やその頻度などに関し、その先の予定をたてていくことであると考えられます。次回は、脂肪肝関連に関しご案内する予定です。
参考;
Gastroenterology and hepatology update 9th June 2016, London Bridge Hospital
BMJ Clinical Research 322(7281):276-8 · March 2001