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2019年8月10日 (土)

溶血連鎖球菌(溶連菌)感染症について

溶連菌感染症と聞くと、唾も飲めなくなるほど喉が痛くなる咽頭炎を想像されることが多いと思いますが、溶連菌(A群溶血性連鎖球菌)は、菌の侵入部位によって様々な症状を引き起こします。最も多い急性咽頭炎の他にも、上気道炎、急性胃腸炎、膿痂疹(とびひ)、蜂巣織炎、猩紅熱(Scarlet fever)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎などがあります。また、菌の直接の作用ではなく、感染後の免疫学的機序を介して、リウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすこともあります。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎はいずれの年齢でもかかりますが、学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人では症状がわかりにくい場合もあります。咽頭炎は冬季および春から初夏にかけての2つのピークがあり、家庭、学校などの集団での感染も多くなります。

溶連菌感染と診断されたならば、抗菌剤の内服をします。溶連菌は抗菌剤によく反応しますが、しっかり除菌をするために、処方された薬を指示通りに飲みきることが大切です。

溶連菌感染後に起こることとされるリウマチ熱は、遺伝的素因があることが分かってきました。また、リウマチ熱を来す溶連菌の型が先進国では流行らなくなっており、発症には社会環境因子も大きく関与しているとされています。

一方、溶連菌感染後の急性糸球体腎炎は、現在もある一定の確率で発症を認めます。発症時期は、溶連菌感染2~3週間後が最も多いとされています。急性糸球体腎炎の3大症状は、高血圧、血尿、浮腫であり、小児の場合は、頭痛、イライラ、血尿、乏尿、むくみを症状とすることがほとんどでです。排尿が自立していない幼少児は、保護者が尿の異常に気がつくことが多いですが、学童期のお子さんは、あえて注意をしていないと気がつきにくい場合もあります。

溶連菌感染は、急性期以後の、慢性の腎炎の原因にもなり得ます。日本の学校検尿の目的の一つは、潜在性慢性糸球体腎炎を早期に発見することが挙げられます。

溶連菌感染症と診断されたならば、次の2点を注意して下さい。

1)処方された抗菌剤を指示通りにしっかり飲みきること

2)診断後2-3週間頃の尿の色に注意をすること

当院では溶連菌感染と診断した場合、3-4週間後の検尿をおすすめしています。特に、現地校に通われているお子さんは、検尿の機会がなかなかないと思いますので、検尿のご希望があれば、仰って下さい。


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