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2019年6月28日 (金)

子宮頸がんとヒトパピローマウイルス(HPV),そしてHPVワクチンについて その2

子宮頸がんの予防対策として、子宮頚部細胞診による検診が行われ、日本においても子宮頸がんの死亡率の減少に成果をあげてきました。しかしながら近年はその効果も限定的となっており、子宮頸がんの罹患率・死亡率は上昇傾向となっております。

その理由は細胞診の精度の問題です。検査の性質上、一定の割合で異常がある人を見逃してしまう(偽陰性)可能性があります。そのため、精度がより高いといわれている細胞診とHPV-DNA検査併用、またはHPV-DAN単独検診は日本においてはまだ国内全体に普及できておりません。加えてHPV-DNA検査の健診への導入はHPVワクチンの接種と組み合わせて検討されるのが通常です。

もう一つの理由としては、日本の検診受診率は40%台と欧米先進国の70-90%弱と比較してあまりにも低くなっております。特に20歳代を含む若年層の検診受診率の低下は大きな問題となっております。

これらの理由から、日本では検診のみで子宮頸がんの死亡率を低下させることは難しい状況といわざるを得ません。また、検診にてがんになる前に病変を見つけることができたとしても治療が必要となり、子宮に対する侵襲は避けられず、また病気が見つかったことによる精神的、肉体的負担は小さくはありません。

そのためにHPV感染そのものを阻止するワクチンによる予防と、検診による予防を重ねて行うことが非常に重要になります。この考えは世界的に認識されており、世界的にも標準的な考え方であるといわれています。オランダでは、世界に先駆けて2017年2月よりHPV単独健診を実施しており、30歳以上の女性に対して子宮頸がんの一次検査としてHPVテストを施行し、陽性の女性に二次検査として細胞診を行っています。オーストラリア、ニュージーランドでもすでに導入されており、イギリスでもNHSにて2019年から導入の予定となっています。その他欧州では今後さらに導入が加速するものと思われ、日本との検診方法のちがいにおいても広がる一方のようです。

HPVワクチンとHPV検査の導入におけるもっとも重要な利点として、検診間隔の延長があります。確かに女性にとって子宮がん検診は精神的にも肉体的にも決して容易なものではないです。そのため、世界で一番子宮頸がん予防が進んでいるオーストラリアでは、それらの導入により生涯検診回数はこれまでの26回から半分以下の10回に減少しました。もし9価ワクチンを組み合わせれば、検診は生涯1-2回で済むようになるかもしれないといわれています。

 

  1. “日本産科婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために http://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/HPV_Q%26A.pdf より抜粋”
  2. 野口大斗、岡本愛光 子宮頸がん及びHPV関連がんの疫学と予防 産婦人科の実際 Vol.67 No9 941-948, 2018
  3. 小貫麻実子、松本光司 HPVワクチン時代の子宮頸がん検診 産婦人科の実際 Vol.67 No9 955-961, 2018

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