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2019年2月21日 (木)

子宮頸がんとヒトパピローマウイルス(HPV),そしてHPVワクチンについて その1

子宮頸がんとは、子宮の入り口付近(子宮頸部)から発生するがんで、日本においては年間約1万人が罹患し、この病気が原因で毎年約2900名が死亡しているといわれております。特に罹患者、死亡者数ともに近年増加傾向を示しているのに加え、年代別罹患率は年次推移とともに若年化の傾向を示しており、最近では20-40歳前半に増加傾向を示しているのが日本における子宮頸がんの特徴で、非常に重大かつ重要な問題です。

子宮頸がんはその原因が科学的に証明されている非常にめずらしいがんであり、それは高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)の子宮頸部への感染です。子宮頸がんは大きく2つの組織のタイプに分類されますが、いずれのがんも高い確率でHPVが検出されます(扁平上皮癌ほぼ100%、腺がん90%以上)。このウイルスの主な感染経路は性的接触であり、過去に一度でも性交渉の経験がある女性のうち50-80%は、生涯で一度はHPVの感染機会があると推計されています。健康な女性ではHPVが感染しても約9割の方は一過性の感染で終わりますが、何らかの原因で持続感染された人の中から前がん病変をへて子宮頸がんに進展します。通常がんになるまでには数か月から数年以上を経て進展していくと言われています。HPVの持続感染から前がん病変になるのは1割弱で、最終的に子宮頸がんになるのは1%またはそれ以下と推計されますが、日本において子宮頸がんが年間1万人以上認められ、さらに増加傾向を示していることから、いかに一般女性におけるHPV感染が多いか、そしてその感染を防ぐことがどれだけ重要であるかがわかると思います。

HPVは100種類以上がありますが、発がん性のある高リスク型は16, 18, 31, 33, 35, 45, 52, 55型など約15種類になります。それ以外の型は感染してもがんにはなりません。その中でも16型と18型は子宮頸がん症例で最も多く検出されます。日本においてもこの2つの型で65%を占め、さらに20歳代、30歳代の子宮頸がん症例のそれぞれ90%、76%で検出されます。加えてこの2つの型は子宮頸がん以外にも、外陰がんや膣がん、男性も含めた肛門がんや中咽頭がんの主要な原因になっていることが明らかになってきております。

つまり、HPVの感染を予防することができれば子宮頸がんのみならずHPVに起因する多くのがんの予防になるのではと期待されています。

 

参考文献

1.国立がん研究センターがん対策情報センター https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

2.国立がん研究センター がんの75 歳未満年齢調整死亡率2015 年集計結果https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2016/1221/20161221_02.pdf

3.日本産科婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために http://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/HPV_Q%26A.pdf

4.Onuki M, et al: Human papillomavirus infections among Japanese women: age-related prevalence and type-specific risk for cervical cancer. Cancer Sci 2009; 100: 1312-1316.

 


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