ジャパングリーンメディカルセンター　英国・グリーン通信: 脂肪肝と運動

今回は「脂肪肝と運動」についてご紹介致します。まずは脂肪肝の概要はご存知でしょうか。

健康診断などでお腹の超音波検査を受けられたことのある皆さんの中には脂肪肝を指摘されたことのある方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。「まあ、比較的多くみられる異常所見なので、経過を見ていていいですよ」と説明を受けることもあるかもしれません。「果たして本当に様子を見ていてよいのだろうか？」と疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。

脂肪肝は肥満、アルコール摂取などに付随してみられることが多いものです。医学的には飲酒に起因するアルコール性肝障害に含まれるものと、アルコールが主な要因ではない非アルコール性脂肪性肝疾患（Non Alcoholic Fatty Liver Disease; NAFLD）と分類されています。更に、この飲酒があまり関係しないNAFLDは、単純に脂肪が沈着した脂肪肝（Non Alcoholic Fatty Liver)（NAFLDの中の約80-90％）と脂肪沈着に炎症を伴った非アルコール性脂肪性肝炎（Non Alcoholic Steat-Hepatitis)（NAFLDの中の約10-20％）を含みます。単純な脂肪肝と異なり、NASHはウイルス性肝炎やアルコール性肝障害などと同様に肝硬変や肝がんに進行する危険性があるため、各方面から注意が喚起されています。根気強い長年の取り組みによりウイルス性肝炎への対策が奏功している一方で、生活習慣病でもある脂肪肝は増加傾向にあるのが実情です。よって、単純に「様子をみてよい」ということはないと言えます。（参考1）

脂肪肝は生活習慣病のひとつであることから、飲酒量、栄養バランス、運動などが、その対応に効果的であることは、いうまでもありません。ここでは肝臓に沈着した脂肪と運動に関して強調したいと思います。2015年の先進的な報告（参考2）では、体重の減少に関わらず運動で肝臓の脂肪が減少することが報告されています。中高強度の身体活動によりNAFLDが改善するというものです。具体的には普通歩行（3METS；安静時の3倍程度の運動強度　参考3）を週に4時間ほど行う以上の活動動作となります。運動に換算すると、速足（4.2METS）は週に3時間程度、平泳ぎのスイミング（5.3METS)は週に2.5時間程度、ジョギング（7METS）は週に100分程度となります。ここに挙げているのは有酸素運動が主ですが、運動強度が同等であれば、いわゆる全身を動かす有酸素運動でも、部分的な筋肉を動かすレジスタンス運動でも差はないということが後に報告されています（参考4）。40から45分の運動を週に3回、12週間継続することにより脂肪肝が改善されたという結果が得られています。これは大変理解しやすい指標です。もちろん、もともと他の病気を持っていたり、足腰に問題がある人は予めの調整が必要ですので、そのまま適応することは避けるべきでしょう。

以上のように食事のバランスに配慮し、体重管理を行うことも重要ですが、運動は脂肪肝に対しても大きな武器であることが科学的に証明されています。前回のコラムの繰り返しとなりますが、まずは無理のない範囲からアクティブに過ごすことを考えるのが無難です。日頃の活動強度に少しだけプラスしたアクティビティーを取り入れ、習慣を身に着けるところから始めてみられてはいかがでしょうか（参考5）。

参考1；

肝炎情報センター　非アルコール性脂肪性肝疾患

http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/shibousei.html

NHS Non Alcoholic Fatty Liver Disease

https://www.nhs.uk/conditions/non-alcoholic-fatty-liver-disease/

参考2；

Moderate to vigorous physical activity volume is an important factor for managing nonalcoholic fatty liver disease: a retrospective study.

Hepatology. 2015 Apr;61(4):1205-15.

https://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/021f50b68620a355f5cb943237cac17b.pdf

参考3；

健康作りのための身体活動基準2013

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf