「イギリスの水」 その1
日常的に診療室において多くお尋ねいただく、硬水に関するご質問に対する一般的な見解をご紹介致します。
今回は「乳幼児にミネラルウオーターをあげても良いでしょうか?」というご質問です。
ミネラルウオーターにもいろいろな種類があるので一言ではいえませんが、基本的には避けたほうがよいでしょう。
ミネラルウォーターとは「特定水源から採取された地下水のうち、地下でミネラル分が溶け込んだもの」のことです。ミネラルウォーターの殺菌は、国ごとに基準が異なっています。
「源泉に対して、微生物学的に健全な水であり、その総生菌数が正常であること」これがヨーロッパの基準で、必ずしも十分な殺菌が行われているとは限りません。そのため、特に免疫力の弱い新生児にはお勧めできません。
ミネラル成分はその吸収、排泄の過程で胃や腸、腎臓に負担になり、また下剤の成分にもなる硫酸塩が含まれるため下痢症状が出ることもあり、乳幼児には避けることが望ましいと言えます。しかし、外出先や旅行先では水分補給のためボトルウォーターに頼らざるを得ません。その場合、硬度や成分を確認することが好ましいでしょう。
成分を確認するポイントは、1)水の硬度、2)塩含有量(sodiumまたはNaと表示)、3)硫酸塩含有量(Sulfate, SOまたはSO4と表示)を確かめることです。いずれも、低い値を示すものほど、乳幼児には負担をかけません。もちろん、乳児に与える際は、ボトルウオーターを一度沸騰させて、冷ましたものを使用するようにしましょう。
水の硬度とはミネラルの含有量で決められており、実際には、水に含まれているカルシウムとマグネシウムを全て炭酸カルシウムに換算して数値化し、その値によって水の硬度を表しています。
計算式:(カルシウムmg/ ℓ ×2.5)+(マグネシウムmg/ℓ×4)=水の硬度 (mg/ ℓ)
各国によって、軟水、硬水の境界値は若干異なりますが、WHOの基準は以下の通りです。
mg/ ℓ | |
軟水 |
0-60 |
中程度の軟水 |
60-120 |
硬水 |
120-180 |
高度な硬水 |
180以上 |
たとえば、日本の水道水の硬度は20-100 mg/ ℓ程度、ボルビック水は60 mg/ ℓ、エビアン水は約300 mg/ ℓ、コントレッスは約1450 mg/ ℓとなっています。
一方、イギリスの水は大陸ヨーロッパに比べると硬度は低いのですが、地域によって差があります。
一方、イギリスの水は大陸ヨーロッパに比べると硬度は低いのですが、地域によって差があります。
ちなみに、濾過型や蛇口型の浄水器を通しても硬水は硬水です。浄水器は、塩素や不純物や匂いを除去すると同時に、一部の重金属(体に悪影響を及ぼす鉛や銅など)を除去する効果があるもので、硬水を軟水にすることはできません。イギリスの水道水が硬水であっても、ミネラウオーターに比べるとミネラルの含有量は低く、一度沸騰させれば乳幼児にも問題ありません。
(水と体の関係は個人差がございますので、水と体調変化についてご心配があれば、最寄の医療機関へ御相談下さい)