アレルギー相談室


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2019年2月21日 (木)

質問5:内服薬や点鼻薬を使い続ける以外の花粉症の治療はないですか?

アレルギー性鼻炎でダニやスギ花粉がアレルゲン(抗原)とわかっている患者さんの場合、日本では耳鼻科やアレルギー科で免疫療法(以前は減感作療法と呼ばれていました)という治療を行っています。もう40年以上前から世界中で良く知られている治療法で、アレルギー反応の原因物質をごく少ない量から注射したり舌下に投与することで、体を徐々に慣らしていくものです。スギで約70%、ダニでは約80%の患者さんに効果がみられますが、治療には少なくとも2年間かかりますので、その間は注射に通ったり規則正しく薬を使用したりする必要があります。花粉症の出る数ヶ月間だけ抗アレルギー薬を内服している患者さんにとっては、内服よりも負担が大きくなる可能性もありますが、一年を通して症状で苦しんでいる患者さんには良い選択肢になるでしょう。日本では小学生以上で行われることが多いようです。
ただし、残念ながらイギリスのGPではこの治療は行われておらず、アレルギー専門医だけが治療の方法として選ぶようになっています。イギリスでもアレルギー性鼻炎はとても多いのに、いったいなぜでしょうか?
実は1990年頃まではGPでも免疫療法を行っていたのですが、当時のイギリスでは重篤な副作用が他の国よりもずっと多かったのだそうです。そのため、イギリスの医療システムの元では一種のトラウマのようになってしまったのでしょう。最近のアメリカでの調査では、約1000回の注射で1回の全身的な副作用(0.1%)、アナフィラキシーショックは約100万回に1回と言われており、知識のある医師が設備の整った環境で行う限り、危険な治療ではないはずなのですが、残念ながらイギリスで免疫療法を開始するためには専門医の受診が必要になります。

2019年2月 1日 (金)

質問4:日本でスギ花粉症の出る時期にイギリスで飛んでいる花粉は何ですか?

もう自覚症状が出ている患者さんもいらっしゃいますが、この時期にはAlder(ハンノキ)の花粉が飛び始めています。大体1月から4月の終わりまで花粉を飛ばし、ピークは2月中頃から4月前半と言われています。ハンノキは日本でもほぼ全域にある樹木で、ちょうどスギと同じ頃に花粉を飛ばし始め、4月頃まで続いています。ですから、スギ花粉症、ヒノキ花粉症と診断されている患者さんの中には、実は元々この花粉にも反応している方もいらっしゃるでしょう。

ハンノキ以外に、1月から花粉を飛ばしている樹木に、Yew(イチイ)やHazel(西洋ハシバミ)があります。これらは4月終わり頃まで続きます。

もう少し経って2月半ばからは、Willow(ヤナギ)の花粉が飛び始めます。これは街路樹の中では見分けやすい樹なので、花が咲いているのに気付かれる方も多いでしょう。4月頃まで続きます。同じ頃にはElm(ハルニレ)の花粉も飛びます。

Birch(カバノキ)もAlder(ハンノキ)と同じカバノキ科の樹木で、これは3月から6月頃まで花粉が飛びます。北海道に住んでいらっしゃる方にはシラカンバ花粉症の方も多く、これはBirchの一種ですから、イギリスでも全く同じに花粉症が出ます。

街中に樹木が多く緑に眼が癒やされるイギリスですが、樹木の花粉もたくさん飛んでいると言うことになりそうです。地面が土であればいったん落ちた花粉はそのままなのですが、アスファルトや石の路面では、何度も舞い上がりなかなか花粉の量が減りません。さらにディーゼル粒子やPM2.5などによってアレルゲンに感作されやすくなることもわかっています。

季節の花粉については、Met Officeの花粉カレンダーを参考にしてみてください。これからの季節は、天気予報の花粉情報にも注意するようにしましょう。

https://www.metoffice.gov.uk/health/public/pollen-forecast


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