英国・グリーン通信


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2013年3月 4日 (月)

国境を越えたワクチン接種

「日本で予防接種を開始したのですが、続きをイギリスで接種出来ますか?このような質問をたくさん頂きます。

当院におけるワクチンは小児の定期予防接種、また海外への旅行や赴任に伴って接種される旅行ワクチンに大別されますが、どのような点が日本とイギリスで違うのか?また、渡英前にどのような点に気をつけて準備をしておくと良いのか?などについて大まかにお知らせ致します。

ほとんどの場合、日本と欧米では使用されているワクチンが違います。製剤が違う場合、接種する回数や時期が異なります。日本における小児定期予防接種は少しずつ改定され、欧米のスケジュールに徐々に類似してきているようですが、接種回数、接種時期、製剤などの違いがあります。特によく質問を受けるワクチンを例に挙げてみました。

- ポリオ

欧米ではすでに不活化ポリオワクチンが主流です。最近日本でも不活化ワクチンが導入されました。イギリスではポリオワクチン単独ではなく、ジフテリア、破傷風、百日咳、Hib(インフルエンザ菌)と5種類一緒になったワクチン製剤になっています。日本で開始し、イギリスで続きを受ける可能性が高いときには、上記のワクチンを月年齢に応じ、同じ回数だけ接種してくると、イギリスでのスムーズな接種に移行できるでしょう。

- 髄膜炎C型

日本では小児のスケジュールに組み込まれていないワクチンです。イギリスにしばらく滞在し、学校などの集団生活に入ることになる場合、このワクチンを接種するように学校やかかりつけ医(GP)からアドバイスされることがよくあります。

- 日本脳炎

髄膜炎C型とは異なり、日本では定期予防接種に入っているのに対し、イギリスでは対象になっていないワクチンです。「イギリスで日本脳炎ワクチンの続きを接種することが出来ますか?」という問い合わせがありますが、イギリスには小児を対象に認可された日本脳炎のワクチンがありません。接種の途中でイギリスに来た場合、日本への一時帰国時に接種するという選択肢もあります。

- 麻疹・風疹・おたふくかぜ

イギリスでは3つが一つのワクチンになっており、定期接種に組み込まれています。それに対して、日本では定期接種の麻疹・風疹ワクチンと任意接種のおたふくかぜワクチンの2つに分かれています。日本で接種してくる場合、麻疹・風疹ワクチンだけでなく、おたふくかぜワクチンも同じ回数接種しておくとよいでしょう。

日本で海外旅行用ワクチンを開始して、イギリスで続きを行う場合、必ず接種時期、接種した製剤名(メーカー固有の名前があるのでその名前)を控えておかれることをお勧めいたします。製剤による接種回数の違いやスケジュールの違いを把握するためには不可欠です。

大変おおまかにご紹介いたしましたが、イギリスへの移動だけでなく、イギリスからその他の国への移動に際しても、このような違いを把握した上で、数年先までの見通しを考えながら、担当医とじっくりワクチン計画をたてて頂くことがスムーズな免疫獲得の第一歩といえるでしょう。


参考

Department of Health., Green Book. (2013).
https://www.wp.dh.gov.uk/immunisation/files/2012/09/Green-Book-updated-280113_test.pdf

国立感染症研究所 感染症センター. 日本定期/任意予防接種スケジュール(20歳未満). Updated 1 April 2012
http://idsc.nih.go.jp/vaccine/dschedule/2012/ImmJP12.pdf

日本小児科学会, 日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール. Updated 5 August 2012
http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_110427_2.pdf


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