英国・グリーン通信


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2013年6月11日 (火)

ピロリ菌 in JAPAN and GB

皆さんはヘリコバクターピロリ感染という感染症を知っていますか。ピロリ菌は胃の粘膜を好んで住みつき、有害物質を産生し、胃粘膜に影響を与え、結果胃潰瘍・十二指腸潰瘍、慢性胃炎萎縮性胃炎、胃癌、胃リンパ腫を発生させるといわれています。このピロリ菌は除菌療法といって、お薬で治すことができますが、いままでの日本の保険適応では慢性胃炎は除菌の適応ではありませんでした。適応にするかどうかは長い間医療の現場では論争となっていました。

現在日本人の主な死因は悪性新生物ですが、その内胃癌の罹患者数は男で1位、女で3位、更に死亡者数は男で2位、女で3位と高いです。萎縮性胃炎から胃癌が発生しやすくなるといわれており、この萎縮性胃炎の段階で除菌を行うことができれば,胃癌の罹患・死亡数,医療費の減少が期待できるため今年2月厚生省はヘリコバクターピロリ感染胃炎に対する除菌療法の保険適用を認めました。 日本ヘリコバクター学会 http://www.jshr.jp/index.php?page=info_index#news10 日本消化器病学会http://www.jsge.or.jp/member/oshirase/data/helicobacter_pylori_qa.pdf 英国は日本に比べて全人口におけるピロリ菌感染率は低いですが、年齢別には日本と同様、高齢者に多く、若年者で少なくなっています。英国の中でもLondonが一番感染率が高く、これは貧富の差であったり、移民の問題も絡んでいます。(参考文献1) 英国を含む欧米人のピロリ菌感染による胃炎の様式は日本と異なり萎縮化する傾向が低く、これが胃癌が少ない要因と考えられています。(参考文献2) 英国の胃癌の罹患者数は男で10位、女は10位にも入っておらず、死亡者数も男で7位、女で10位と低いです。英国の癌の罹患者数1位は男で前立腺癌、女で乳癌、死亡者数は男女とも肺癌が1位であり、英国の胃癌に対する関心は日本より低いようです。 Cancer research UK、Top twenty most common cancer http://www.cancerresearchuk.org/cancer-info/cancerstats/incidence/commoncancers/#Twenty 英国では医療費が無料であるため、消化不良症状、胃潰瘍・十二指腸潰瘍を認める場合は積極的にピロリ菌を検査するようになっています。ピロリ菌陽性で除菌を行った場合、治療が短くなり医療費を抑えられるためです。除菌方法や治療方法は日本と変わりません。 NICE guidance; Helicobacter pylori: testing and eradication http://publications.nice.org.uk/dyspepsia-cg17/guidance#helicobacter-pylori-testing-and-eradication 慢性胃炎、胃癌の原因はピロリ菌感染だけでなく、高塩分食や喫煙、ストレス、遺伝などの様々な因子が関連して起こります。普段から胃症状を認める方や以前に慢性胃炎を指摘されたような方はこれを機会に医療機関に相談、または生活習慣の見直しをされてみてはいかがでしょうか。 参考文献1:The burden of Helicobacter pylori infection in England and Wales. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2869837/pdf/12113485.pdf 参考文献2:Why does Japan have a high incidence of gastric cancer?Comparison of gastritis between Uk and Japanese patients http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1860129/


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