正確な血圧の測り方
血圧測定は健診で必ず行われる主要検査項目です。ただ、健診では医師からまあ大丈夫でしょうと言われ、値が記憶にない方も多いのではないでしょうか。一般的に、血圧が高くなっても症状を認めないことが多く、合併症を生じた(発症)時には、脳梗塞や心筋梗塞、腎不全など生死にかかわる状態になり得るとして、“Silent Killer”とも呼ばれています。将来の大きな健康被害だけでなく、UKでは、成人の4人に1人(60歳以上では2人に1人)、毎年10億ポンドの医療支出になっているそうで、問題は多岐にわたります。また、厚生労働省の発表によれば、日本人にも推定4000万人もの有病者がおり、実感は湧きませんが、とても身近に潜む病気と言えます。まず敵を知ることが第一歩と考え、この度は、正確な血圧測定について述べたいと思います。高血圧は、上(収縮期血圧)が140mmHg以上、下(拡張期血圧)が90mmHg以上のどちらか一方、あるいは両方を満たすものと定義されています。しかし、これを超えれば高血圧というわけではありません。血圧の正常異常を判断するには、正確な評価が必要になるのです。イギリスのガイドラインでは、高血圧が疑われる場合、以下のいずれかを勧められます。
ABPM (Ambulatory Blood Pressure Monitoring)
24時間自由行動下血圧測定
マンシェットを腕に巻き、30分おきに24時間、自動で血圧を記録します。寝ている時も仕事中においてもです。生活の中で血圧がどう変動するか詳細がわかり、睡眠中に血圧上昇する夜間高血圧や病院で血圧上昇しやすい白衣高血圧の方の参考にもなります。欠点としては、ずっと腕に巻いている煩わしさがあること、普及が十分でなく、どこの病院でもできるわけではないことなどが挙げられます。
HBPM (Home Blood Pressure Monitoring)
家庭血圧測定
ご家庭用の血圧計によって血圧日記をつけていただきます。朝晩の1日2回、1週間測定を行います。こちらでも50ポンド前後で購入でき、気軽に始めることができる点は良いのですが、正確な評価には何点か注意が必要です。
・腕に巻くタイプの血圧計がベスト(計測値が最も安定)
・朝は起床1時間以内、排尿を済ませてから測定、食事と内服はその後でとる
・入浴、飲酒、喫煙、カフェイン摂取後の測定は避ける(最低30分、1時間あけると完璧)
この他、よく頂くご質問に、1機会に何回測るべきか、その際、どの値を採用するべきかというものがあります。これまで統一した見解はありませんでしたが、最近では、原則2回測り、その平均値を出すというのが主流になっています。いずれにしても、敵を可視化し、次の対策を練るには、無症状の頃から血圧に関心をもつことが重要です。血圧に対して気がかりなことがございましたら、いつでもご相談ください。
参照;
1 NICE guidance and guidelines/hypertension
2 高血圧治療ガイドライン2014 (日本高血圧学会)
3 厚生労働省 国民健康栄養調査