アレルギー相談室


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2019年11月 2日 (土)

質問17:子供のアトピー性皮膚炎がすぐぶりかえすのはなぜですか?ステロイドは効きすぎて心配です。

アトピー性皮膚炎は様々な年齢でみられますが、乳児~幼児期から診断されていることが多いかもしれません。顔や首、肘の内側や手首、膝の裏側などで痒い皮疹が見られます。お子さんでは、痒みが我慢できずかきむしってしまい、かさぶたが付着した状態で受診されることがほとんどです。

汗をかくことや冬の乾燥、花粉の時期に悪化したり、食物アレルギーに関連して悪化したり、女性であれば生理周期で症状が変動したりすることもありますが、いったん落ち着いたように見えても症状がまたぶり返してくるのが特徴の一つです。アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は、もともと外界の刺激に対するバリア機能が低下しているため、水分を保つことが苦手で、また外からのアレルゲンや細菌などにも弱くなっています。食べ物のみが悪化のきっかけであれば、食事に気をつけることで皮膚炎の悪化を減らせることもあるでしょうが、普通は乾燥などの外側からの条件も影響するため、治療を継続する必要があります。

虫刺されやとびひなどの皮膚症状はその時のみの病状ですから、いったん皮疹が消えてしまえば、それで治療の終了ですが、アトピー性皮膚炎はそうではありません。良くなったと思って保湿剤を塗るのを止めたり、まだ少し皮疹があるのにステロイド軟膏を中止したりすると、もともとのバリア機能の低下のためまた症状が出てきます。

ステロイド軟膏は皮膚表面の炎症を抑えて治療をするもの、保湿剤は皮膚の乾燥を防ぐもの、とその働きは全く違っているので、まだ皮疹がある状態、つまり皮膚に炎症がある状態では保湿剤のみでのケアでは皮疹は治りません。きちんと、触れてみて皮疹がない部分と同じような手触りになるまで(炎症がなくなるまで)処方されたステロイド外用薬を塗りましょう。

良く効く薬なのになんとなく悪い薬と思われているのは、早く止めすぎてすぐぶりかえすせいではないでしょうか。こんなにすぐにぶり返すのに塗ったらすぐによくなるなんて怪しい、と本末転倒の疑いを持つようになってしまっているように思います。(色素沈着もよく言われますが、ステロイド外用薬のせいではなく、炎症によるものです。)

10年程前からアトピー性皮膚炎をコントロールしていくために「プロアクティブ療法」ということが言われています。悪化してから治療を強めていくのではなく、保湿を継続しながら、皮疹の出やすい部分に週に2回ほど前もって弱いステロイド外用薬などの抗炎症治療を加えておくというやり方です。これによって、悪化を防ぎ症状を出さないでおくことが可能になっています。

症状が軽いアトピー性皮膚炎の場合は治療を続け、良い状態を保つことで、年齢と共に寛解(病状が治まっていることをこう呼びます)する割合があがります。悪化させないようにケアを継続することが大切と言うことです。

皮膚炎の部分がじくじくしたり膿が付着したり赤みや熱感が強くなっている場合は、細菌やウイルス(ヘルペスなど)の感染を起こしていることがあります。そういう時はいつも通りの外用薬では治療できませんので、主治医に相談するようにしましょう。


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