アレルギー相談室


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2020年8月 6日 (木)

質問21:新型コロナウイルスが流行っていても吸入ステロイドは続けて大丈夫ですか?

新型コロナウイルスの世界的流行で、UKも大きな被害を受けています。UKでは、NHSによるコロナウイルスに対してのリスクの大きさのグループ分けで、喘息を持つ人はmoderate risk groupに、また重症の喘息であればhigh risk groupに分類されています。また治療をきちんと継続することがすすめられています。

一方、7月末には「気管支喘息の合併は新型コロナウイルスの重症化と相関しない」(国立成育医療研究センター、Journal of Allergy and Clinical Immunology 2020)という発表がありました。

ただここで注意しなくてはいけないのは、一般に感じる重症度と医学的な重症度分類のずれです。「重症化と相関しない」という研究結果が正しいとしても、それは「喘息のある人はコロナウイルス感染で息苦しくならない」という意味ではありません。コロナウイルスの重症度分類では、咳は出ているが苦しくないというレベルは軽症です。肺炎になり息苦しくなり入院して鼻から酸素を吸っても、まだ中等症です。集中治療室に入るような状態になれば重症ということになります。つまりこれは、一般的な感じ方では、「喘息があってもICUには入らなくてよかった人が案外多かったね」くらいに言い換えてもいいかもしれません。またこの論文でも実際の治療のステップダウンはすすめられていません。

喘息のある患者さんは風邪やインフルエンザで喘息が悪化することを経験していることでしょう。気管支拡張薬を増やしたり一時的に内服ステロイドを使って対応するような咳き込みや息苦しさ、それによる不眠は本当につらいものです。しかし、この悪化を新型コロナウイルスの重症度分類に無理やりあてはめると中等症にもならないでしょう。たとえごく軽度の症状が似ているとしても喘息発作と肺炎を同じように比較することはできないのです。

またもちろん軽症のコロナウイルス感染の後に喘息が悪化することも十分想像できます。

吸入ステロイドは気管支の粘膜の炎症を抑え、良いコンディションにするために必要な薬です。これを継続することで風邪をひくことが減ったと感じている患者さんも多いことでしょう。コロナウイルス流行中も、処方されている治療薬はしっかり継続するようにしてください。

アレルギー学会からも「新型コロナウイルス感染症流行下での吸入ステロイド薬の安全性について」の発表が出ていますので、時間のある時に一読しておくとよいでしょう。

日本アレルギー学会 https://www.jsaweb.jp/modules/important/index.php?content_id=70

Journal of Allergy and Clinical Immunology   https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(20)30736-3/fulltext

NHS  https://www.nhs.uk/conditions/coronavirus-covid-19/people-at-higher-risk/whos-at-higher-risk-from-coronavirus/


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