アレルギー相談室


2019年8月22日 (木)

質問14:子供が卵アレルギーにならないような食べ方や、なってしまった時の気を付け方はありますか?

卵は食物アレルギーの発症頻度が最も高く、また成長と共に食べられるようになる割合も高い食品です。日本では、3歳までに68%、6歳までに73%が卵に対して耐性を獲得したという報告があります。

言うまでも無く卵は卵黄と卵白に分けられますが、それぞれのアレルゲンとしての強さが異なっています。主となるアレルゲンは卵の6割ちょっとを占める卵白で、黄身はアレルゲンとしては弱いためあまり問題になりません。離乳食で卵を始めるとき、固ゆで卵の卵黄からと言われるのはそのためです。

卵白のアレルゲンとしてよく検査されるのはオボムコイドというタンパク質です。主要アレルゲンとしては、多い物から、卵白の60%弱にあたるオボアルブミン、12%にあたるオボトランスフェリン、11%にあたるオボムコイド、3~4%にあたるリゾチームなどですが、この中で最もアレルゲン性が高く加熱や消化に対して安定で抗原性が残るのがオボムコイドだからです。

一般的には、上にも書いたように、卵黄部分の抗原性は弱いので、卵アレルギーで卵を除去している場合、最初に食べられるようになるのは卵黄のことが多いでしょう。加熱が不十分な卵は、まだアレルゲン性が高い状態のままですから、卵が生に近いほどリスクが上がります。たとえばメレンゲやマヨネーズ、シャーベットの中の卵は加熱されていませんので最難関ですし、カスタードクリームや柔らかいスクランブルエッグやオムレツはまだ加熱が不十分です。20分間ゆでた卵でもオボムコイドの抗原性は10%くらい残っていますし、卵がつなぎになっているような食べ物はとても多いので、卵アレルギーがある場合は注意が必要です。(イギリスの食べ物についてはIrish Food Allergy Networkが作成している英語版のEgg Ladderがわかりやすいと思います。)固ゆで卵の場合、ゆでてから1時間もおくと、卵白からオボムコイドが卵黄にしみこむことがわかっていますので、卵白がまだ食べられない段階では気をつけましょう。

それでも、子供の場合は、成長のためにも耐性獲得のためにも、できるだけ完全除去はしないで、食べられる段階の卵を少しずつ摂取していくことがすすめられます。

以前は、アレルギーを起こしやすい食品を離乳食としてなかなか与えなかったり、授乳中のお母さんがそれらを避けて食べなかったりということがありましたが、今はそういうことは否定されています。乳児の皮膚炎の原因が特定された特別な場合以外には、効果が無いことがわかったからです。皮膚から感作が起こることが明らかになっており、口周りの湿疹がそのままになっているとむしろそこから感作されて食物アレルギーになる可能性が上がります。食物アレルギーの予防のために、湿疹や皮膚炎はきちんと治しましょう。

既に卵アレルギーがあることが明らかな場合は、まずは小児科医に相談しましょう。何をどこまで食べられているのか、整理していくことで、今後の見通しができ不安が和らぐと思います。

授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04250.html

2019年8月15日 (木)

質問13:イギリスに来た年にはスギ花粉症が無く楽だったのに、2年目からは悪化しました。なぜでしょう?

花粉の飛散量によっても症状は変化しますが、花粉による感作がいつ起こったかによる違いである可能性もあります。

人間の体の中に異物が入ってきた時に、体はそれを排除しようとします。これは当たり前のことなのですが、花粉症ではその反応が過剰になってしまっています。排除の仕組みの第一段階として、アレルゲンになる花粉に対して、体の中でそれぞれに対応する特別なIgE抗体が作られます。

第二段階として、作られたIgE抗体は皮膚や粘膜の下のマスト細胞にくっつきます。マスト細胞は、花粉症の鼻水や鼻づまり、咳などを起こすヒスタミンやロイコトリエンなどを出す細胞です。こうして前もって準備されたマスト細胞の上のIgE抗体は、次にその花粉が体に入ってくるのを今か今かと待っているわけです。

この第二段階までの状態が感作です。症状を起こす準備がされていても、ヒスタミンやロイコトリエンが出ていなければ、まだ花粉症の症状は出てきませんので、感作された段階では自分ではわかりませんし治療も必要ではありません。

しかし、アレルゲンさえ再侵入すればそれに反応してヒスタミンなどが放出される状態ですから、その花粉やよく似た性質をもつアレルゲン('交差性の高いアレルゲン'と言います。)にまた出会えば、すぐに症状が出ます。(これを'Ⅰ型アレルギー反応'と呼びます。)

日本でハンノキ(ブナ目花粉で交差性が高い)やカモガヤ(イネ科花粉の代表)に既に感作されていた方は、イギリスでも同じアレルゲンに出会うことになりますから、たとえスギ花粉が飛んでいなくてもすぐに症状が出るでしょう。一方、これらのアレルゲンによる感作がイギリスに来てから起こった場合は、そのシーズン中には症状が出ないか軽いかで、その翌年に初めて本格的な症状が自覚されるということが多いようです。特にイネ科花粉による感作が起こっている時は、イギリスの長いGrass花粉シーズンのせいで症状がかなりつらく感じられるようです。

2019年6月27日 (木)

質問12:蕁麻疹が治るのにはどのくらいかかりますか?原因は血液検査でわかりますか?

蕁麻疹の治療の目標は、「薬を使わずとも2度と蕁麻疹が出ない体になること」ではなく、「十分に症状を抑制すること」です。ですから、薬を飲むことで蕁麻疹が出ない日ができるまでに数日から1~2週間、出ないまま気にしないで生活できるようになり更に減薬・内服終了できるまでには半年から1年かかる場合もあります。1種類の抗ヒスタミン剤で効果が不十分であれば、薬を変えたり増量したりしながら治療していきます。

蕁麻疹は最初に出始めてから6週間経つと「慢性蕁麻疹」、それ以前は「急性蕁麻疹」と呼ばれます。皮膚をこすったり冷たい物に触れたりアレルゲンを含む食物を食べたり等の刺激無く、いつのまにか皮疹が現れるタイプを「特発性蕁麻疹」と呼び、この呼び名は急性と慢性の両方を含んでいるのです。そしてこの特発性蕁麻疹が、全ての蕁麻疹の70%以上を占めます。

原因になる食べ物を摂取したことで出現する蕁麻疹は、「刺激誘発型の蕁麻疹」のひとつで、アレルギー性のものと非アレルギー性のものに分かれます。原因になる物を食べて出るのであればそれはアレルギーなんじゃないの、と思われるでしょうが、そうともかぎりません。青魚やアクの強い野菜を食べて出る蕁麻疹は、その食べ物自体に対してのアレルギー反応ではなく、その食品中に含まれるヒスタミンなどの物質が作用することで蕁麻疹が出てくる仕組みですから、アレルゲンを確認する血液検査では陽性になりません。またこういう食べ物は、体調によっては蕁麻疹が出ることなく食べることができたりもします。アレルギー性の蕁麻疹ではアレルゲンがIgEを介して反応を起こす、花粉症と同じような仕組みで起こりますので、血液検査などで原因を突き止めることも可能です。ただし、蕁麻疹全体の1割もないと思われますので、明らかに疑わしい食べ物がある時以外はわざわざ検査をする必要はないでしょう。

一般的な蕁麻疹は翌日にはいったん消えることが多いのですが、瞼や唇によく起きる血管性浮腫という分類の蕁麻疹は、消えるのに数日かかることがほとんどです。血管性浮腫や血管炎など、稀なタイプの蕁麻疹はアレルギー検査以外の血液検査を行うことがあります。

2019年6月26日 (水)

質問11:雨が降ると花粉は減るはずなのに花粉症や喘息が悪化するのはなぜ?

「暖かい晴れた日に花粉量が増える」気温が上がると既に作られている花粉が放出され飛散量が増えますので、花粉症の症状は悪化することがほとんどです。しかし残念ながら、逆も真とは言えないようです。しとしとと静かに降る雨であれば、花粉は地面に落ちて、全体の飛散量も低下すると考えられますが、実際には、「雨が降っているにもかかわらず花粉による鼻炎や、花粉症をきっかけに起こる喘息が悪化する」ことはしばしば観察されています。

これについては、数年前にオーストラリアでの嵐の後、数千人が喘息発作で救急外来を受診し、死亡者も出たことから、雷雨喘息(thunderstorm asthma)という言葉が知られるようになりました。嵐の時に舞い上がるカビの胞子の影響もあるようですが、主な原因は大量に飛んでいた花粉が嵐による強風や湿度、雷などの影響で水分を吸って破裂したことだろうと考えられています。花粉が破裂すると、壊れたことでアレルゲンとしても強まり、ばらばらな破片になることで数も増え、それぞれの破片は花粉本体が入れない細い気管の奥まで入り込んでアレルギー反応を起こします。本来の花粉は排気ガスの中のPM2.5(粒子径が2.5μm以下の微小粒子状物質)等よりもはるかに大きく、せいぜい鼻の粘膜や喉のあたりにしか入りません。しかしいったん壊れた花粉の破片は、PM2.5同様あまりにも小さいため浮かんだままゆるやかに空気の流れに運ばれ、肺の奥にまで届いてしまうのです。

花粉の破裂は、以前から日本では黄砂によって起こることがわかっていましたが、イギリスでは大気汚染によるPM2.5や嵐が影響することが多いようです。細かくなった花粉は大気汚染物質を伴って肺に入り込むこともあり、喘息に悪影響を及ぼします。雷雨喘息は、イギリスではちょうど今からの時期に起こりやすくなるため要注意です。

 

2019年5月24日 (金)

質問10:口腔アレルギー症候群とは?

花粉に感作された後、その花粉のアレルギーを起こす原因にとても似たタンパク質をもっている果物や野菜に対してもアレルギー反応を起こす場合があります。そういう花粉と食べ物の関係を「交差抗原性がある」「交差反応性がある」と言い、その症状を口腔アレルギー症候群(花粉-食物アレルギー症候群)と呼びます。ほとんどの場合は、口の中や喉のイガイガ感や痒み、腫れぼったさなどですが、鼻汁やくしゃみなどの鼻症状や、涙や充血などの眼症状、瞼や顔の腫れが出ることもあります。1割程度の患者さんでは吐き気や腹部不快感もありますし、まれに、アナフィラキシーショックを起こすこともありますので、症状が強い患者さんでは、他の食物アレルギー同様、万が一に備えてエピペンを持っておくことも必要です。特に豆乳やモヤシ、スパイスによる反応は重症化しやすいと言われています。

花粉に感作されていても花粉症が発症していないという時期に、食べ物による反応のみが出ることもあります。また、小さい頃は食べても平気だった食べ物で反応が出るようになることがありますので、予期せずに口の中に違和感が出てきた時はそれ以上は食べない、などの注意が必要でしょう。治療の原則は原因食物の除去ですが、缶詰やジャムなどの加工食品は食べても大丈夫なことがほとんどです。

主な花粉と交差反応性については、下の表を参照してください。(食物アレルギー診療ガイドライン2016より)

イギリスで多いGrass花粉については、イネ科のところを見るようにしてください。

「食物アレルギー ガイドライン 交差反応性」の画像検索結果

質問9:花粉で顔が痛くなることがありますか?

あります。花粉による刺激でピリピリチリチリする感じが起こったり、痒みが出てきたりします。痛みとまでいかなくても、この時期に肌荒れが起こる方は関係があるかもしれません。花粉による皮膚炎が悪化すると、赤みが強くなり、ブツブツができたり、手触りがざらざらになってきたりもします。これは空気伝搬性接触性皮膚炎のひとつで、花粉皮膚炎と呼ばれます。

治療としては、鼻水やくしゃみの花粉症に使うのと同じ抗アレルギー剤と、皮膚の炎症に対してはステロイド外用薬を使います。

肌のバリア機能が低下していると、花粉皮膚炎は出やすくなりますので、もともとアトピー性皮膚炎や乾燥性皮膚炎がある方は保湿剤などの日々の治療をしっかり続けておきましょう。また、この症状は花粉が皮膚を刺激することで起こりますから、できるだけ皮膚をカバーしておく方がよいですし、帰宅した時は部屋の中まで入る前に衣類をよくふるったりたたいたりして花粉を室内に持ち込まないようにしましょう。

2019年4月30日 (火)

質問8:アレルギーがあるかどうかを調べるためにどんな検査をしますか?

アレルゲン(アレルギー症状を起こす原因物質)に対する抗体の量を調べる血液検査が、最も手軽に行える検査です。それぞれのアレルゲンに対しての特異的IgE抗体が検出されれば、「感作されている」ということがわかります。感作されているからといって、必ず症状が出るわけではありません。(また、この検査で「感作されていない」という結果が出ても、アレルギーを否定することはできません。)

しかし、ある樹の花粉に感作されていて、その花粉が飛ぶ時期に鼻炎が悪化していれば、その花粉が原因である可能性が高いと言えますし、エビを食べた時に皮膚症状が出ていて、検査でエビに感作されているということであればそれが原因だと考えることができるでしょう。

「アレルゲンかもしれない」と疑っている物がはっきりしない場合は、花粉やホコリ、動物のフケ、カビなどのよくある吸入アレルゲン、あるいは、甲殻類、卵、牛乳、ピーナッツなどのよくある食物アレルゲン、何種類かの魚のアレルゲン、のような複数のアレルゲンのグループに対してこの検査を行います。ですから、検査をする前に、「どんな時にどんな症状が出たか」「何を食べた時か」「何をしたときに症状が出たか(例えば「食事の後に駅まで走った」など)」等の状況がわかる情報が多いほど、検査を絞り込むことができます。タンポポがあやしい、とか、ニンジンがあやしい、とか、豚肉があやしい、とか、あまり一般的ではなくても、原因らしいものが絞り込めている場合は、それについての血液検査が可能なこともあります。

このほかには、針で皮膚にほんの少量のアレルゲンを入れて、腫れる・赤くなるなどの反応が実際に患者さんの皮膚で起こるかどうかを観察するテスト(プリックテスト)もありますが、GPでは行っていません。この検査が必要な患者さんはアレルギークリニックなど専門医を受診することになっています。これは日本でも同様です。

個別のアレルゲンの識別方法ではないですが、IgE全体の量としての総IgEが増えているかどうかや、白血球の中の好酸球数が増えているかどうかもアレルギーがあるかどうかの参考になります。また、気道のアレルギー性炎症の有無や度合いをみるのには、呼気NO検査も使えます。

2019年4月 4日 (木)

質問7:花粉症で咳も出ますか?

花粉症の症状としては鼻水やくしゃみ、目の痒みがよく知られていますが、喉の奥の痒みや咳、耳や顔の痒みが出てくることもあります。痒みを抑える薬と鼻水を抑える薬は同じなので、花粉症の薬(抗アレルギー剤)を開始することで鼻水、くしゃみや痒みと一緒に咳も治まる方もいらっしゃいます。しかし「花粉症の薬を飲んでいるのに咳が出てきた。」「咳のせいで夜なかなか寝付けない」「夜中に咳で目が覚める」などの場合は、追加の治療が必要になることがあります。

花粉症で咳が出る場合、鼻の粘膜と同じように喉の粘膜が敏感になってしまって出る咳(アトピー咳嗽や喉頭アレルギーによる咳)、鼻水が喉の奥に流れて喉を刺激する咳(後鼻漏による咳)、隠れていた咳喘息が花粉症のせいで悪化して出てくる咳、などが考えられます。その他に、鼻閉があるために口呼吸になって喉が痛んでしまっていることや、花粉症の上に風邪をひいてしまったという場合もあるかもしれません。胸焼けがある人では逆流性食道炎が咳の原因ということもあります。咳の度合いはどのくらいか、乾いたコンコンいう咳なのか、痰がらみの咳なのか、一日の中でどういう時に特に咳が多い感じがするか、今飲んでいるお薬は何かなど、患者さんの自覚症状、経過、そして診察所見から原因を探していきます。

抗アレルギー剤を増やしたり変更したりすることで改善する咳もありますが、粘膜の炎症を鎮めるための吸入ステロイドや気管支拡張剤が有効な咳もあります。後鼻漏による咳が長引いている場合は、抗生物質や去痰剤が少し長めに処方されることもあります。

咳が出るから花粉症ではない、と花粉症の薬を止めるのは早計です。上記のようにいろいろな要素が考えられるとは言え、咳が出てきたことで花粉症の薬を中止する理由はほぼ無いからです。花粉症に対して点鼻薬が処方されている場合は、鼻水や鼻づまりがある時だけでなく、最初に説明されたとおりに毎日きちんと点鼻を行いましょう。内服薬も毎日内服する方が効果的です。市販の咳止めや風邪薬を花粉症の薬と一緒に飲むと眠気が強くなることがありますので、受診が難しく市販薬を内服する時は成分をよく確認したり薬剤師さんにきいてみるようにしましょう。

2019年3月13日 (水)

質問6:アレルギーを防ぐ方法はありませんか?

患者さんからよく訊かれる質問です。アレルギー体質は遺伝の影響がありますので、これをなくすことは残念ながら今の医学ではまだ無理です。しかし、アレルギー疾患についてわかったことは年々増えていますし、それにより対応の仕方も変わっています。

たとえば、花粉症であればごく軽い症状を感じてすぐ、または例年症状が出るよりも前の時期から、抗アレルギー剤の内服や点鼻薬を開始すること。アレルゲンによって粘膜や皮膚の炎症がひどくなってからよりもコントロールが楽になります。

喘息であれば、自覚症状が落ち着いても吸入薬をきちんと継続すること。気管支の粘膜で種火のように続いている慢性的な炎症を根気よく治療することで、だんだん症状が出にくくなってきます。

昔は食物アレルギーを心配して妊娠中や授乳中のお母さんに食物除去を指示する医療者もいましたが、今は乳児の皮膚炎がきちんと診断された特別な場合以外には、お母さんが余計な食物除去を勧められることはありません。

また、赤ちゃんであれば、皮膚の症状がなくても新生児期から保湿剤をきちんと塗ってあげること。それによりアトピー性皮膚炎の発症リスクが下がるとわかっています。アトピー性皮膚炎は食物アレルギーの最大のリスクと言われていますので、これを予防することには大きな意味があります。

離乳食が始まった頃であれば、食事の前に湿疹や赤みが出やすい口の周りや頬にワセリンを塗ってあげて、食べ物が皮膚に直接触れるのを防ぎ、食後にはワセリンごと拭いてあげましょう。皮膚からの感作(経皮感作と呼びます。)による食物アレルギーの予防になります。

皮膚炎ができた時は、ステロイド軟膏をきちんと塗って、はやく正常の皮膚に戻してあげましょう。大人も子供も、アトピー性皮膚炎になってからは、経皮感作予防の意味でも治療の意味でも保湿剤によるスキンケアだけでは足りませんので、ステロイド軟膏を医師や薬剤師さんが説明する通りにしっかり使いましょう。

最近は皮膚の状態がよくなってからもステロイド外用薬をすっかりやめてしまうのではなく、間隔をあけて少量使用することで良い状態を維持しようとするプロアクティブ療法が主流になっています。

エビデンスにもとづいた情報のアップデートが一番大切で有効、と言えるでしょう。

2019年2月21日 (木)

質問5:内服薬や点鼻薬を使い続ける以外の花粉症の治療はないですか?

アレルギー性鼻炎でダニやスギ花粉がアレルゲン(抗原)とわかっている患者さんの場合、日本では耳鼻科やアレルギー科で免疫療法(以前は減感作療法と呼ばれていました)という治療を行っています。もう40年以上前から世界中で良く知られている治療法で、アレルギー反応の原因物質をごく少ない量から注射したり舌下に投与することで、体を徐々に慣らしていくものです。スギで約70%、ダニでは約80%の患者さんに効果がみられますが、治療には少なくとも2年間かかりますので、その間は注射に通ったり規則正しく薬を使用したりする必要があります。花粉症の出る数ヶ月間だけ抗アレルギー薬を内服している患者さんにとっては、内服よりも負担が大きくなる可能性もありますが、一年を通して症状で苦しんでいる患者さんには良い選択肢になるでしょう。日本では小学生以上で行われることが多いようです。
ただし、残念ながらイギリスのGPではこの治療は行われておらず、アレルギー専門医だけが治療の方法として選ぶようになっています。イギリスでもアレルギー性鼻炎はとても多いのに、いったいなぜでしょうか?
実は1990年頃まではGPでも免疫療法を行っていたのですが、当時のイギリスでは重篤な副作用が他の国よりもずっと多かったのだそうです。そのため、イギリスの医療システムの元では一種のトラウマのようになってしまったのでしょう。最近のアメリカでの調査では、約1000回の注射で1回の全身的な副作用(0.1%)、アナフィラキシーショックは約100万回に1回と言われており、知識のある医師が設備の整った環境で行う限り、危険な治療ではないはずなのですが、残念ながらイギリスで免疫療法を開始するためには専門医の受診が必要になります。


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